部長っ!話を聞いてください!

鞄の中から財布を掴み取ると、部長に向かって頭を下げ、走りだす。




廊下に飛びだせば、涙が浮かんでくる。

折角話しかけてくれたのに、部長と向き合えなかった。

向き合うことが恐いと思ってしまった。




結局、昼ごはんは外でうだうだしながら済ませてしまった。

午後の仕事は、雑念を追い払うべく、一生懸命パソコンの画面に集中していたのだけれど……終業時間が近づくにつれ、物寂しさがだんだんと湧き上がってきた。

時刻は、四時半になろうとしている。

あと七時間と三十分で、今日が終わってしまう。

一年に一回しかない、部長の誕生日が終わってしまう。



受け取ってもらえないかもしれないけど……やっぱり、誕生日プレゼントを渡したい!



モヤモヤとしながらも、パソコンの画面とにらめっこをしていると、ぽんっと肩を叩かれた。


「土屋さーん、もう時間過ぎてますよ~」


隣のデスクで仕事をしている同僚の女性が、笑みを浮かべながら話しかけてきた。

ハッとし周りを見れば、みんな仕事を終え、それぞれに帰り支度を始めていた。

時刻もいつの間にか五時を過ぎている。


「お疲れさま!」



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