部長っ!話を聞いてください!
けど、昨晩さんざんまき散らした匂いは残っているだろうなと考えると、ちょっぴり憂鬱になってくる。
下の階に降り、鍵を開け家の中に入り、そして扉を閉めようとした瞬間、それを邪魔するように、履きつぶしたスニーカーが扉を止めた。
振り返り見れば背後に、先ほど外で会った男性が立っていた。
「なっ、何ですか?」
「話がしたいなーって」
「話すことはありませんっ!」
見たくもない男の顔をまた見せられ、苛立ちが募っていく。
足が挟まっていようが関係ない。私は力いっぱい扉を閉めようとした。
「痛いっ! 痛いってば、愛由花ちゃん」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでください!」
部長にだって呼ばれたことがないのに、と心の中で悪態をついたとき、扉の向こうにある男の顔が歪んだ。
「下手に出てれば、調子に乗りやがって」
男の手が扉の縁を掴み、次の瞬間、抑えていた扉が大きく開かれてしまった。
「お邪魔しまーす」
私を押しながら、男が部屋の中に入ってくる。
「ちょっと、勝手に入ってこないでください!」
「いいじゃん。俺は姉妹どっちも仲良くなりたいの!」
「仲良くなんてなれるわけないじゃないですか! アンタと姉のせいで、私すごく迷惑してるんですからね! 分かってるんですかっ!?」