部長っ!話を聞いてください!
部長は「さてと」と呟くと、窓際から離れ、玄関に向かって歩いていく。
「えー。帰っちゃうんですか?」
ちょっぴり寂しくなってその背中に話しかけると、ふふっと笑い声が返ってきた。
「匂いが耐えられないから、帰る」
こちらに背を向けたままそれだけ言ったあと、部長は躊躇ったように足を止め、私を振り返り見た。
「……愛由花」
部長に名を呼ばれ、トクっと、鼓動が反応した。
「匂いがきつくて耐えられなかった時は、俺のとこ避難しに来ていいぞ」
俺のところ……部長の、家!?
「いっ、行っても良いんですかっ!?」
「嫌ならいい。無理にとは言わない」
さらっとそう切り返して、部長は再び歩き出した。
「部長ーーっ!」
勝手に身体が動き出す。
私は部長を追いかけ、後ろから抱きついた。
「嫌な訳ないじゃないですかっ! 五分で行きます!」
部長の背中に、そっと頬を押し付けた。
「部長、大好きです」
想いを告げるなんて無理だと思っていたけれど、するりと言葉が出てきた。
ただの上司と部下という関係から一歩進めたことが、嬉しくてたまらない。