黄金の覇王と奪われし花嫁
「幼いユアン様の笑顔が私を救ってくれたんですよ」

トゥイはいつものように、優しく微笑んだ。

「生きてて良かった・・そんな風に思える日が私にもくるかしら?」

「私はそう願ってますわ、ユアン様」

トゥイはユアンを優しく抱きしめた。
トゥイの温かい胸の中で、ユアンは子供のように思い切り泣いた。


トゥイにとって、ユアンは仇の娘だったのだ。 それなのに、トゥイはいつだってユアンに優しかった。
母のように、姉のように、ユアンを見守っていてくれた。


トゥイのように強く生きよう。
そして、トゥイにもらった優しさをいつか別の誰かに返そう。


きっと、風の民の女達はそうやって生きてきたのだ。


強く、優しく。


命を繋ぐとはそういうことなのだろう。


「私のさだめが何かは、まだわからないけど・・・生きていこう」

ユアンは強い風の吹き抜けるアリンナの草原に立ち、地平線を見据えた。

このままずっと、ウラール族にいられるとも限らない。 黄金の狼と恐れられ、父ガイールにも勝利したバラクだって、いつか他の誰かに敗れる日がくるかもしれない。

もしかしたら、私はあの地平線の彼方の見たこともない世界に行く日がくるかも知れない。


それでも、


どんな場所に行こうと、どんな境遇になろうとも、強く強く生きていこう。


ユアンはアリンナの大地に、そう誓いを立てた。
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