黄金の覇王と奪われし花嫁
「ユアン様はガイール様の一人娘ですもの。第一后妃の地位は当然ですわ」

トゥイは自慢気に胸をはった。

「第一だろうが第二だろうが、あんな男の妻になんて・・・」

「ユアン様・・・」

トゥイに心配をかけてはいけない。
そうは思うものの、ユアンの気持ちは沈んだままだった。

尊敬する父に、大好きな兄に、もう会えないのだと思うと胸が潰れてしまいそうだった。


「ユアン様。 私と初めて会った時のこと、覚えていますか?」

トゥイは優しい声でユアンに問いかけた。

「初めて会ったとき??トゥイは子供の頃からずっと側に居てくれて・・」

5つ歳上のトゥイはユアンが物心ついた頃からずっと一緒で、何でも相談できる姉のような存在だった。
改めて、初めて会った時といわれてもよく思い出せなかった。

「ユアン様は小さかったから覚えていないと思うんですけど、私は元々シーン族に敗れた部族の娘です。今のユアン様と同じように、戦に負けて母と共にシーン族に連れてこられました」

トゥイの栗色の瞳が悲しげに揺れる。

「最初の頃は、嫌でたまりませんでした。ガイール様も新しく母の夫となった男も憎らしくて・・・けど、ユアン様やサイラスと仲良くなって、楽しい思い出がたくさん積み重なっていって。
不思議なことに、いつの間にか傷が癒えていきました。
もちろん、父や部族の皆が死んでしまったことは今でも悲しいです。だけど、私は生きてて良かったと思ってます」

「トゥイ・・」
< 13 / 56 >

この作品をシェア

pagetop