黄金の覇王と奪われし花嫁
男は戦い、負ければ潔く命を絶つ。
女は子を産み、命を繋げていく。

誇り高きシーン族の血を繋ぐことがユアンの使命だ。

そんな事は子供の頃から承知している。

それでも・・・

ユアンはバラクの黄金色の瞳をきっと睨みつけ、言い放つ。


「あなたのような蛮族の男に辱めを受けるくらいなら、今ここで私は死にます」

ユアンはきつく目を瞑り、勢いよく短剣を振り下ろした。

「ユアンさまっ」

トゥイの悲鳴が響き渡る。

ザクリと皮膚を切り裂く音がする。

が、不思議と痛みは無い。

違和感を覚えたユアンは、おそるおそる目を開けた。

ユアンの振り下ろした短剣はバラクの大きな手の平に突き刺さっていた。
切り裂いた皮膚はバラクのものだった。

バラクの手の平から流れ落ちる血がユアンの胸に染みを作る。


黄金の瞳がユアンを見下ろす。


「お前はもう俺のものだ。勝手なマネは許さない」

自信と威厳に満ちた声、有無を言わせない物言い。

バラクは勝者だった。生まれ持った才と圧倒的な力で駆け上がってきた覇者だ。


ユアンは俯き、唇を噛み締めた。
今のユアンには、この男に歯向かうだけの力が何一つなかった。
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