病弱少女の杞憂
「その時さ、千歌がだいぶ良くなってから、進路の話したの覚えてる?」


「うん、もちろん。…橘くんはあの時からここに行くって言ってたよね。」


この学校は有名な進学校で医者になりたい橘くんがいきたいというのは納得できた。


そして、真剣に勉強を頑張る姿がかっこよかった。


正直、最初はチャラそうだと思っていたけど、そんな橘くんの真剣な姿に惹かれてしまっていた。


「俺さ、その時は医者になりたくなかったんだよね。」


橘くんは苦笑いして、言った。


「え…?」


「周りから期待されて、親はそれ以外許さないっていうし、もうなんか、嫌になってたんだよ。だからあの日、サボりに行ったわけ。」


初耳だ。


そんなことをおもっていたなんて…。


「そうだったんだ…。」


「あぁ。そして、あの時千歌は、『すごいね。たくさんの人の命を助ける仕事をするんだ。頑張って。』って。単純に、嬉しかったんだ。嫌々だったその仕事がたくさんの人の役に立てるんだって、当たり前のことだけど、忘れてたんだ。それを、千歌が教えてくれた。」


わたしに向けられる笑顔か眩しくて、優しくて…嬉しかった。


「良かった…。」

< 5 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop