小悪魔な彼にこっそり狙われています
「動揺どころかすっかり誤解されてるし、社長にも怒ったんですけど、『誤解されるくらいならまだ伝え方が足りないんじゃない?』なんて逆に鼻で笑われまして。なら宣言してみようかと」
「なにそれ……」
こんな時もいつも通り、冷静に説明してみせる彼に、開いた口が塞がらない。
本当、信じられない。
なに考えてるかわからない。
「……明日から会社でどんな顔すればいいのよ。それにあんな風に皆の前で言ったりして、今更撤回だって出来ないんだから」
「別に、普通でいいんじゃないですか。撤回なんてそもそもする気ないので大丈夫です」
彼はその真っ直ぐな目で私を見つめると、綺麗な茶色い瞳に、涙でぐしゃぐしゃなこの顔を映す。
なによ、それ。一方的で勝手な言い方。
……だけど。
「俺はいつでも本気で、井上さんのことしか見えてません。だから、井上さんの全部、俺にください」
こんな時でもすぐに素直に受け入れられない、こんな私ですらもあなたが愛してくれるから。
少しずつ、自分も好きになれる自分になりたいと思えるようになったんだ。
その想いをこめるように、私は少し高い位置にある来栖くんの顔を両手で掴むと、自ら彼にキスをした。