小悪魔な彼にこっそり狙われています
『水どうぞ』
『おー……やさしいねぇ、くるすくん、こんなおんなあいてに……』
こんな女、なんて自分のことをそんな言い方するあたり、男性となにかあったんだろうか。
だからこんな、らしくないようなやけ酒を?
その胸に誰かの姿があるのかと思うと、怖気付いていられないと思った。
『……井上さんにだから優しくするって言ったら、どうしますか?』
真剣な顔で問いかけてみた俺に、澪さんはうつろな目で一度固まる。かと思えば『ぷっ』と吹き出した。
『あははは!なにそれ、くるすくんしゅみわるー!』
……まさかの、『趣味が悪い』と笑われるとは。
けらけらと笑い続ける彼女に、まともには受け取ってもらえなさそうだと苦笑いをこぼした。
しばらく笑い続けたかと思えば、澪さんはテーブルに伏せたまま『はー……』と息を吐き出す。
『……けど、うれしいなぁ。そういってもらえるの』
伏せたままの顔は、腕で隠され見えない。
どんな顔をしているのか、それひとつすらうかがえないことがもどかしくて、ただ隣に寄り添うことしかできなかった。