小悪魔な彼にこっそり狙われています



「失礼します」



その声とともに現れたのは、今日は灰色のスーツを身にまとった来栖くん。

先日の一件からあまり顔を合わせないようにしていた彼の突然の出現に、また心臓がドキッと跳ねる。



普段あまりこちらのオフィスに来ることがないから油断してた……。

そんなこちらの気持ちを知らず、彼はめずらしく姿を見せたかと思えば、このギスギスとした空気も全く気に留めず私を探し出した。



「井上さん。社内で設備不良のところがあるんで、業者呼ぶ前に確認してもらってもいいですか」

「え?あ……えぇ、わかった」



総務課は、こういった社内設備の対応も仕事のうちだ。

社内設備の確認なら他の社員に任せてもいい。けれど、今のこの場の空気を思うと自分が一度席を外した方がいいだろうと判断し、私は来栖くんに呼ばれるままにオフィスを出た。



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