小悪魔な彼にこっそり狙われています



「これが本当の井上さんなんだと思ったら、もっと好きになりました」



もっと好きに、なんて。

恥ずかしさに赤らむ頬を見られたくなくて、手の甲で隠す。

けれどそんなこちらの反応に気づいているのかいないのか、来栖くんは普通の顔のまま犬を抱き上げ話を続けた。



「昼間の話の続きになるんですけど。俺は、怖い井上さんも、かわいい井上さんも知ってます。厳しくいなきゃいけない気持ちも、なんとなくわかります」



私のいろんな顔や気持ちを、知ってくれている……?



「だから多少キツい言い方をされても理解できるし、『こう言ってるけど犬の前ではデレデレなんだよな』って想像して笑えたりもする」

「ちょっと!」



想像しないでよ!そして笑うな!

そんなことを思われていたのか、とキッと睨んでも、来栖くんは犬に目を向けたまま。



「けど、周りは当然知らないじゃないですか。だから怖がられたり、一方的に悪く見られたりする」



正しいことを言ったとしても、伝え方が上手くなければ、それは正しく伝わらない。



『井上さんいつも怖いんですよ』



あの言葉と皆の視線が、なによりの証拠だ。



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