小悪魔な彼にこっそり狙われています
「ついきつく言っちゃいそうになる時は、どうしたらいい?」
真剣な顔で問う私に、来栖くんは犬からこちらへ視線を向けて、「うーん」と少し考える。
「じゃあひと呼吸して、この言葉を思い出してください」
「言葉?」
そしてそっと距離を縮めると、私の左耳にボソッと囁く。
「……ー、……」
微かにかかる息と、耳から入り込む低い声。それに加えてそのひと言に、顔がボッと熱くなるのを感じる。
きっと耳まで真っ赤になってしまったのだろう、そんな私を見て、来栖くんはおかしそうに微笑んだ。
いつも無愛想な彼からこぼされた笑みがなんだか余計に恥ずかしい。
顔を背ける私と笑う来栖くんを、膝の上の犬は楽しそうに見つめていた。