小悪魔な彼にこっそり狙われています
言葉だけで終わればいい人なのに……ちょっと隙を見せたらすぐ触れてくるから、困る。
そう来栖くんの顔を思い浮かべながら、総務課のオフィスに書類を持って行くべく、階段を下ろうとした。
「……あれ、井上さん」
その時、突然下からのぼってきたのは、頭の中に浮かべていたその顔……来栖くん。
突然の彼の登場と、名前を呼ぶ声、思い出していたキス、それらに心臓がドキッと飛び跳ねる。
「どうしたんですか、こっちのフロアにいるなんて珍しい」
「え!?あっ、えと……」
その動揺は思い切り表れてしまい、目は見られないし声は上ずってしまう。
意識してる、なんて彼に知られることが恥ずかしくて、とりあえず早くその場を切り抜けようと階段を降りようとした。
ところが、慌てていてまともに足元も見ずに歩き出した足は段差を踏み外し、体はガクンッと安定感を失う。
「わっ!」
げっ、まずい!このままじゃ落ちるっ……!
そう思うけれど身を守る術も分からない。