小悪魔な彼にこっそり狙われています
「ではこちら痛み止めになりますので、痛くなったら飲んでくださいね。お大事にどうぞ」
それから数時間後。私と来栖くんは、優しい笑顔の看護師さんに見送られ、病院を後にした。
あの後、渋る来栖くんを連れてやってきたのは会社からタクシーで10分ほどの場所にある小さな整形外科。
そこで医師に診てもらい、軽い捻挫と診断された彼は、包帯を軽く巻いた左足をかばいながらひょこひょこと歩いて建物を出る。
「大丈夫?松葉杖とか借りてこようか?」
「松葉杖って……大げさな」
来栖くんの黒い鞄を彼の代わりに持ちながら気遣うものの、首を横に振られてしまう。
医師は『一週間あれば治る』と言っていたし、来栖くんももう普通の顔をしている。けれど先ほど見た彼の足首は、痛々しく腫れてしまっており、思い出すとこちらの心が痛む。
「……ごめんなさい、私のせいで」
「めずらしく素直ですね」
「めずらしく、ってなに!」
いや、確かにめずらしいかもしれないけど!
自分を庇って怪我をしてしまったとなれば、私だって申し訳なさでいっぱいにもなる。
そんな思いで彼の鞄の持ち手を握る手に力を込めれば、来栖くんは私の頭をぽん、と撫でた。