小悪魔な彼にこっそり狙われています
「別にいいですよ。井上さんのこと抱きしめられて、寧ろ役得です」
「なっ!?」
「それに明日明後日は土日で休みだし。どうせ元々ロクに家事なんてしないから支障もないです」
『役得』なんて軽く言う彼に、なにを言っているのかと一度は思うものの、きっとそれは私が気負わないための彼なりのフォローなのだろうと続けられた言葉から察した。
……優しい、なぁ。
頭を撫でたその大きな手の感触に、どんな顔をしていいかが分からない。
すると、ちょうど近くを通りがかったタクシーに目を留めた来栖くんは、手をあげ車を停める。
「じゃあ、俺このまま早退するんで。井上さんは会社に……」
「あっ、ううん!会社に戻る前にせめて送る!荷物持つし、せめてご飯の支度くらいならするから、安静にしてて!」
このまま、はいさようならと別れることも出来る。けれど、せめて彼が安静に過ごせるようになにか力になりたい。
その思いから言うと、来栖くんは少し驚いたように口を開く。