小悪魔な彼にこっそり狙われています



「あ、来栖くん。聞き忘れてたんだけど、嫌いなものとかなかった?」

「はい、特には」

「そっか、ならよかった。おかずいくつか作り置きして冷凍しておくから、あたためて食べてね」



言いながら包丁を置き、切り終えた人参をボウルへ移すと今度はゴボウへ手を伸ばす。

すると、その場に立ったまま来栖くんがこちらを見つめていることに気づいた。



「ん?どうかした?」

「いや、井上さんいい嫁さんになりそうだと思って」

「よ、嫁!?」



その口から突然出た言葉に、かぁっと頬が熱くなる。



「世話焼きで面倒見がよくて、料理も本当に慣れてるっぽいし。あ、何ならこのまま俺に嫁入りします?」

「し、な、い!!」



嫁入りなんて、そんなセリフはきっと冗談なのだろう……とは、思う。

けれど、笑うことなく真顔のまま言うものだから、こちらは判断に困ってしまう。



赤い顔でふん、とまな板に向かうと、背後では彼が近づいてくる気配がした。

彼が近づく、それだけの気配で、料理に集中などできない。



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