小悪魔な彼にこっそり狙われています
「こら、向こう座って安静にしてなさい」
「そうしたいんですけど、体が勝手に井上さんに吸い寄せられます」
「またバカなこと言って……」
呆れたように振り向くと、すぐ背後にあるのは、私を見つめる彼の顔。
触れそうなほど近い距離と、不意に香った来栖くんの香り。
それらにぐっと息が止まりそうになると、目を丸くした自分の顔が彼の茶色い瞳に映った。
「……バカみたいですけど、本当です」
その言葉と同時に彼の腕はそっと私をうしろから抱きしめる。
いつもワイシャツに隠れた彼の腕は、見た目より太くしっかりとしている。半袖の素肌同士が触れ合うと、彼の体温の低さにまた心臓がドキリとした。
「りょ、料理の邪魔だから離れて」
「嫌ですって言ったら?」
「そう言われても……」
耳元で囁く低い声に、全身の熱が上がるのを感じる。
そんな私の反応を笑うかのように、彼は耳にそっとキスをした。