小悪魔な彼にこっそり狙われています
カツカツカツとヒールを鳴らしながら早足で廊下を歩く。
一見冷静なその行動の一方で、頭の中は混乱状態だ。
お、おおお落ち着け。落ち着け私。
いや、でも今のってなに?どういうこと?
来栖くんと彼女が……ふたりで、こんな早朝のオフィスで、彼女泣いていたし。
『まだ晶のことが好き』って言ってたよね?
晶って、来栖くんのことをそう呼ぶってことは、まだ好きってことは……元カノ?
仕事を始めるどころじゃない。とりあえずどこかで深呼吸して落ち着こう。
そう逃げ場所を探すように、とりあえず非常階段から外へ出ようとドアノブへ手を伸ばす。
ところがその瞬間、阻むように後ろから伸ばされた手が先にドアノブを掴み、開けさせないようにドアを引っ張った。
「……追いついた」
耳元で響く低い声に、ゾク、と全身が反応する。
すぐ後ろにいる彼は急いで追いかけてきたのだろう。「はぁ」と小さく息を切らせる。