憂鬱な午後にはラブロマンスを
「珠子、君からも頼んでくれないか?」
珠子はそんな残酷なことを言わせるのかと俊夫の神経を疑いたくなった。
愛情はなくても平穏な生活を約束すると言ったばかりなのに、既にこんな仕打ちをするのかと珠子は居た堪れなくなった。
その場から逃げる様に足早で門扉の方へと向かった珠子を見て俊夫は小さな溜息を吐いていた。
「やっぱり、彼女には無理なのかな・・・」
「え?」
「無理強いして彼女を自分のものにしようとした。」
俊夫が珠子を無理矢理抱いたのではないかと、二人の抱き合うシーンを妄想してしまった洋介は、頭に血が上り俊夫に殴りかかりたくなった。
「まさか、嫌がる珠子に・・・あんたは手を出したというのか?!」
「今はまだだが」
「今は」という俊夫の言葉に更に頭に血が上りそうになった洋介は、相手が自社の社長と分かっていても殴りたくて拳を握りしめていた。
そして震わせる拳を見て俊夫は再び大きく溜息を吐いた。
「彼女をどんなに口説いても君を抹殺しなければ彼女を得るのは難しそうだ。」
「クビだと言うのですか?珠子の為ならクビでも構いません。」
「そうできればとっくの昔にやっているよ。第一、同じ営業部のしかも直属の部下などさせるものか。」
俊夫は洋介の存在が怖くて早めにプロポーズをし、断れない状況を作り終いには既成事実を作ってしまおうと計画を立てていた。
しかし、どうやらそれも無理の様だと感じてしまった。