憂鬱な午後にはラブロマンスを
洋介の隣の席に座った珠子を見て俊夫は目を細めていた。
「すいません、珠子さんを遠藤部長に連れていかれました。」
「いや、いい。今夜は取り合えず様子を見るとしよう。」
この旅館へ来る途中の車中でたっぷりと珠子とのキスを楽しんだこともあり、洋介に珠子を横取りされてもたかだか宴会の席での事だと、俊夫は思ったよりは冷静だった。
それでも、珠子の隣の席を陣取る洋介が気に入らなく俊夫は時々威嚇するような目を洋介に向けた。
「社長にかなり気に入られたようだな」
「そんな話はしたくないわ」
珠子は洋介の隣の席がこれ程に居心地の悪い所だとは想像していなかった。
そこは営業部だけでなく他の部署の女性社員たちが洋介目当てに酌をしにやって来ては珠子を睨みつけていく。
そしてあからさまに無視した態度を取られてしまう。
「部長、飲んでますか?どうぞ♪」
「ああ、飲んでるよ。ありがとう。君も飲んでるのかな?」
酌をしてもらった洋介はお猪口を軽く口につけると残りの酒はテーブル下の器に捨ていた。
そして、二・三度軽くお猪口を振ると女性社員へお猪口を返した。
「珠子、酒を、」
洋介に言われ珠子が代わりに女性社員のお猪口に酒を注ぐと、その女性社員は不服そうな顔を珠子に向けた。