女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
第4章 対峙

1、北階段の対決


 1週間後、7月に入った。

 夏もいよいよ本番となり、百貨店は忙しくなりつつあったけど、私は福田店長の計らいで準社員からパートに降格して貰った。

 この店に入った時は独身で文無しだったのでお金の必要さと保険もきく準社員は有難かったけど、今では人妻なので、それは気にする必要がなくなったのだ。まあ、とにかく、桑谷さんにはそのように説明した。

 私が、あなたの扶養に入ってもいい?と聞いた時の桑谷さんの顔は、全く見物だった。

「―――――え??」

 驚いて、目をかっぴらいて私を見詰めていた。声も若干裏返っていたかも。

「・・・・そんなに驚かなくても」

 私の言葉に、いや、別に嫌ではないんだけど、と懸命に言い訳をして、その後まじまじと私を見た。

「君、働くことが好きだって公言してたよな?」

「好きよ」

「・・・パートになったら仕事減るんじゃないのか?」

 私はうっすらと笑った。

「減るわね。でもその分、家のことをちゃんとしたいの。まだこの家の改造も終わってないし、あなたの妻になった自覚が出てきたのよ」

 その言葉に、何と彼は感動したようだった。・・・野郎は単純だ。私は罪悪感など欠片もなく、ただにっこりと微笑んでいた。

 実際は、体がしんどくて働けないのだ。売り場にも迷惑だし、私の代わりにちゃんとしたフルタイムさんを雇うほうが店のためにもいい。

 現在妊娠4ヶ月なので、この繁忙期が終わったら退職するつもりだった。店長にはそう伝えてあって、8月の繁忙期が終わったら人材の募集をかけると言ってくれたのだ。


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