キミと初恋、はじめます。
「あら、詩姫?今度は料理に行くの?」
ばったりと廊下で鉢合わせたなっちゃんに、あたしは頷き、なっちゃんの持ってる荷物を見て首を傾げた。
「それは?」
なんか、すごい重そうだけど……。
「今買い出しに行ってきたのよ。ペンキとかニスとかね」
買い出しに行ってたんだ!
でもこんな重そうなの、なっちゃんひとりでなんて大変だよ……。
「なあ樋口、構成でやりづらくないか?女ひとりだろ?そういうの、重くねーの?」
野村くんの心配に、なっちゃんは笑いながら首を振った。
「楽しいわよ。これくらいの買い出し、どうってことないし」
なっちゃんはペンキを覗き込みながら、「それに」と付け加えた。
「料理とか裁縫とか、そういうのは苦手だけど、大工系の作業って好きなのよね」
なっちゃん、イケメン……!
あたしがなっちゃんに瞳を輝かせていると、野村くんは苦笑して「そうか」と頷いた。
「樋口、皆待ってるから、俺ら行くな」
「えぇ。委員長、詩姫に手出すんじゃないわよ」
「へいへい」
なっちゃんに手を振って、あたし達は再び家庭科室へと向かう。