キミと初恋、はじめます。


「あ、シキちゃん!」


階段を上がろうとした時、後方から聞こえてきた祐介くんの声に振り返る。



「あ、祐介くん、なっちゃん!」


祐介くんだけでなく、なっちゃんもいてあたしは思わず笑顔をこぼす。



「いたか?」


「ううん、みつかってない。けど今医務室に行ったら南先生が理事長の所かもって」


「あ、それは確かにあり得るかもね。よく呼び出されてるじゃない、あいつ」


「んじゃ、とりあえず理事長室に行ってみようぜ」



あたし達は、頷きあって階段を駆け登る。


ふと時間を見ると、既に8時50分。

急がないと開店まで残り10分しかない。


足を止めることなく、騒がしい校内を縫うようにあたし達は駆け抜け、やっと人が少なくなってきた理事長室の前で立ち止まった。


祐介くんが先に立ち、トントンッと扉を叩く。


「はーい」という呑気な声が聞こえてきて、祐介くんがガチャッと扉を開けると


「あ、いた」


「なにやってんの、あんた」


「翔空……その荷物、なに?」



翔空が大きな荷物を抱えて理事長室を横断してるのを見て、あたし達は一斉に眉を寄せた。


理事長はといえば、そんな翔空をほったらかして窓の外を見て楽しそうに笑っている。



「あれ、シキ?祐介も夏も」


「あら、みんないらっしゃい!」



あたし達に同時に振り返った翔空と理事長。

タイミングが絶妙で、親子だなぁ……と感心していると、なっちゃんに軽く小突かれた。
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