キミと初恋、はじめます。
「翔空……なにしてるの?」
戸惑い気味に尋ねれば、翔空はケロッとした様子で肩を竦め、持っていた荷物を机の上に置いた。
「見てのとーり、母さんの雑用」
「やーね。わたしはちょこーっと手伝ってって呼んだだけじゃないの」
「よく言うよ。力仕事ばっかり俺に押し付けて、自分は何もしないで外ばっかり見てるくせに……」
「何もしてないわけじゃないわよ!ちゃんと生徒の事を把握するのがお仕事なんだからっ」
傍から見れば、仲良しすぎる親子のたわいない口喧嘩……だけど。
今はそんな事をしてる場合じゃない。
「理事長、もう学園祭始まります。翔空も用意があるので、連れて行ってもいいですか?」
祐介くんがあたしとなっちゃんの代わりに進み出る。
「あら、もうそんな時間なのね~。もちろんよ、連れて行って!わたしはこれから変装して校内を回るからっ」
にっこりと教師らしからぬ(理事長だけど)事を言った理事長に、あたしとなっちゃんの顔がひきつる。
理事長……翔空とは違う意味でマイペースだ。