キミと初恋、はじめます。
突然、甘い香りに包まれた。
「っ……翔空?」
振り向いたあたしの視界に映ったのは、白いタキシードを着たいつにも増して、キラキラしている翔空だった。
翔空はあたしを片腕で抱きしめると、片手であたしの腕を掴んでいる手をつかむ。
「いててててててっ」
「俺の姫に、気安く触んないでくれる?」
いつもの翔空からは想像も出来ないほど冷たく、低い声。
ぎりぎりと相当強い力で締め付けていたのか、悲痛な顔をしながらその男はパッとあたしの腕を離した。
野村くんはそんな翔空を見上げてポカン。
いや、野村くんだけじゃない。
その場に居合わせた全員が固唾を飲んだ。
「……な、なにすんだよっ」
「てめぇ、調子のんなよ!」
胸ぐらを掴まれた翔空の身体が揺れる。
「と、翔空を離してくださいっ」
思わず考える前にその人にタックルしていた。
「うおっ」
小さいあたしが突っ込んだ所で、そこまでの攻撃にはならないだろうけど。
驚いたのか翔空の胸ぐらを離したその男を睨みつけた。