キミと初恋、はじめます。
「……シキ」
グイッと腕を引っ張られたかと思うと、突然フワッと浮いた身体。
「へっ!?」
一瞬にして翔空にお姫さま抱っこをされたあたしは、驚いて間近にある翔空の顔を見つめる。
「ねえ、野村弘樹くん」
「は?えっ、お、俺っすか?」
いきなりフルネームを呼ばれて驚いたのか、野村くんがビクッと肩を揺らす。
翔空……なんで野村くんの事知ってるの?
あたしも驚いて、抱かれたまま翔空と野村くんを交互に見る。
「俺のポケットからスマホ出して」
「は、はいっ」
翔空に言われるまま、野村くんは翔空のポケットからスマホを取り出す。
「な、何する気だよ!」
声を荒らげた大学生に、翔空は冷たい視線を向けたまま
「何?警備員呼ぼうかなって」
「は、はぁっ!?俺らが何したってんだよ!」
「んー、星凜の理事長の息子に手を上げた?」
〝理事長の息子〟
その言葉に、大学生の2人の目が見る見るうちに開かれていき、その言葉を理解した途端今度は真っ青になっていった。
そりゃそうだ。
この星凜においての、理事長は絶対的権力者。
その息子に手を上げたとなれば、警察行きになってもおかしくないのだから。