キミと初恋、はじめます。


「……野村くん、後はよろしく。ちょっとシキ借りるよー」


「は、はいっ」



あたしを抱いたまま、翔空は早足で教室を出る。


もちろん人目を惹き付けてはいるけれど、翔空から発せられる〝近づくな〟オーラで誰も近づいてこない。



「と、翔空……どこに行くの?」


「…………」



あたしの質問に応える事は無く、使われていない空き教室に入ると、ガチャッと鍵をしめた。


あたしをタンッと地面におろすと、間髪入れずに強く抱き寄せられる。



「翔空……?」


戸惑って、あたしを離そうとしない翔空の背中に手を回す。


どうしたんだろう。

いつもと様子が違う。



「……ねえ、翔空?」



何度呼びかけても、あたしを抱きしめたまま動こうとしない。



「シキ」


「ん?」


「好きだよ」


「……うん、あたしも好きだよ?ねえどうし…たの…?」



最後まで言い終わらないうちに、あたしから離れた翔空がその場にストンッと腰を落とした。


目線が逆転して、あたしが翔空を見下ろす形になる。



「…キスして…?シキ」


「っ……え?」



突然の言葉に、ボッと顔が赤くなる。

下からあたしを見上げる翔空の瞳は、何故かすごく揺らいでいた。
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