キミと初恋、はじめます。


「……引かない?」


上目遣いで、揺れた瞳であたしを見上げてきた翔空にドキンッと鼓動が高鳴る。



「ひ、引かないよ」


「ほんとーに?」

「うん」



翔空は迷ったように俯いた。

さっきまであんなに凛々しかったのに、こんなにもか弱くなってる。


これも翔空の〝素〟なのだろうか。


あたしの前だから見せてくれる顔っていうのも嬉しいけれど、さすがに少し戸惑ってしまう。



「俺、シキと一緒にいられない時間が辛い。シキじゃない女の子に話しかけられるのは、疲れるだけなんだよ。余計に、シキが恋しくなる」



あたしじゃない女の子……。


今の翔空のこの格好からして、翔空目当ての女の子がたくさん来たのだろうけれど。


その女の子達に話しかけられるのが嫌になって、あたしに会いたくなったってこと?



「……抜け出して、シキの所来たらさ。別の男に触られてんだよ?俺、そーゆーの、ほんと嫌なんだよね」


「ご、ごめん……」


「シキが謝ることじゃないでしょ。俺が嫌なのは、あーゆー男共だよ」



な、ナンパする人達ってことだよね。

誰振り構わず女の子に言い寄っていく、男の人って結構多いらしいし……。


「特にシキなんかは、目を離したら、どこに連れていかれるかわかんないし……ね?」


「あ、あたし、知らない人についていかないよ!子供じゃないんだから…」


知らない人にはついていくなって、子供の頃散々言われたから身に染み付いてる。

さっきだって、連絡先なんて教えるつもりもなかったし。
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