イジワル同期とスイートライフ
「目の前で銃とかぶっ放されて、また別のバカがそれを撮影しはじめて」

「それで全員、携帯取り上げられたのか」

「もう完全にとばっちりですよ。会社のも取られたんですけど、やっぱり始末書ですかね、これ…」

「まあ、理由が理由とはいえ、形式上はな…」



書くほうも承認するほうも気乗りしなそうに、はあと息をついた。



「スーツケースは見つかったのか?」

「単なる積み忘れだったらしくて、昨日空港に着いたって連絡が」

「厄年なんじゃないの、お前」

「終わったと思ってたんですけど」



土日が明けても疲れが取れきっていないようで、久住くんが首を回す。



「まあ、ああいう国なんだって身をもって知ることができましたよ」

「だな、経済は絶対に政治の影響を受けるからな」

「空港封鎖は解除されましたが、クーデター自体はまだ続いてますもんね」

「取引の進め方も、ひと工夫いるなあ」



そんな前向きな受け止め方なの、と驚いているうちに、国内の階に着いた。

自分のフロアに戻ろうと、ふたりに挨拶して別れようとしたところを、久住くんに呼び止められる。



「あのさあ、俺への愛に免じて頼みがあるんだけど」

「日本語おかしくない?」



ていうかその愛とか、もう一回言う必要あった?

踊り場の私を数段下から見上げ、彼がなにやら人の悪い笑みを浮かべた。



「絶対怒ると思うから、永坂さんいる前で言わせて」



…なんだ、いったい。

警戒しながらも、まあ仕事の話ならと足を止める。

内容を聞いた瞬間、怒りはしないものの、叫んだ。





「ちょっと待ってよね!」

「まあまあ、いい人選だと思うよ」



ビールジョッキをテーブルに叩きつけた私を、吾川くんがなだめる。

この一件に関わっていなくもない彼は、責任を感じているらしく、ふざけた雰囲気が普段より少ない。

忘年会シーズンが早くも始まっているのか、会社近くの居酒屋は、団体客でにぎわっている。

隅っこで飲む私たちのもとに、招集をかけた本人がようやくやってきた。

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