イジワル同期とスイートライフ
「荒れてんな、六条」

「誰のせいだと…」

「あ、生みっつ」

「私まだ半分以上残ってるんだけど…」

「なにかわいこぶってんだよ、そんなのひと口だろ」



ジョッキを首筋に押しつけてやると、「冷てえ!」と声を上げる。

やがて新しいジョッキが揃ったところで、乾杯した。



「国境警備隊発足を祝してー」

「なんで警備隊だよ、言うなら国連だろ」

「でも国連の公用語って、日本語ないじゃん?」

「なんでもいいけど、なんで私なの…」



久住くんの頼みというのは、要するに海外部門と国内部門が、互いに学び合う場を作ってくれ、ということだった。

簡単そうに聞こえるけれど、とんでもない。



「いったいいくつの部署を取りまとめればいいの…」

「まあ、俺ら宣伝と、販促、サービス、カスタマー、用品、中古、ざっと数えただけでもこれだけあるね」

「個別にやるより、誰かが統括したほうが効率いいに決まってんだろ」

「だからってねえ」



あんまりなことに、『お前が適任だから、海外営業の総意として本部長にもそう打診しちゃった』らしい。

共犯だった永坂さんも、『ごめんねよろしく、頑張って』とにこにこしていた。

確かに海外営業部は、国内営業と比べなくても、軽い。

事態を知った幸枝さんと時田さんにもおおいに笑われ、おまけのように励ましの言葉をもらった。



「計画立てるところは手伝うからさ」

「宣伝課なんて、もうぎらぎらしてるよ、海外から盗んでやる! つって」

「年内に少しでも手をつけちゃったほうがよさそうだよね…」



下手にきりよく年明けから、とかやると、ずるずるとスタートが遅れかねない。

ため息をついた私の肩を、頼もしげに久住くんが叩いた。



「ほらな、そういうとこ」

「確かに適任だよ、よろしくね六条さん」

「頼むぜ、ライバル」

「悔しい…!」



その言葉に、簡単に踊らされてしまう自分が情けない。

でもやっぱり踊る。


必要と思ったらやる、それも最速で、最善の手を尽くして。

この姿勢と実行力こそが久住くんたちの強みだ。

私たちは確かに、彼らから学ぶことがたくさんある。

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