イジワル同期とスイートライフ
お互いの声に、吐息が混ざりはじめる。

それでも、話したいことがたくさんあって、どちらも口を閉じることはなかった。



「なんだったんだろな」

「私が聞きたいよ」

「まあ、結局さ…」



なぜか久住くんは続きを言わず、そんなタイミングで、ぐいと身体を重ねてきた。

久住くんの重みと熱に、息がもれる。



「なあ」

「なに…」



そろそろ、返事をするのもきつい。

ゆっくりと揺れる視界の中、久住くんが私の頬をなでた。



「俺のこと好きって言って」



ちょっと、今はやめてよ。

そんな甘い目で見下ろされたら、つい言っちゃいそうじゃない。



「なあって」



深く揺さぶられて、思わずしがみついた。

背中が汗で濡れていて、それが無性に嬉しかった。



「なあ」

「うん」

「うんってなんだよ」



久住くんの声って、いい。

乱暴にしゃべっていてもどこかかわいくて、仕事用の声を出しているときは、一言だけでぴりっと空気を引き締めてみせる。

たまに本気で怖いけど。



「俺のこと好き?」



探るように訊く声に、不安そうな響きと、傲慢な響きが混ざっている。

怒るだろうな、と思いながらも、含み笑いで返した。



「うん」



久住くんは、不意を突かれたみたいに一瞬、きょとんとする。

それから悔しそうに顔をしかめて、「ずりー」と楽しげに笑った。



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