イジワル同期とスイートライフ
「印象違うね」

「え、なにが?」

「眼鏡」



ああ…。



「だろ」

「今日も定例会だね」



押しつけられたドアの窓から、流れる景色に目をやってつぶやく。

その静かな横顔を見ながら、心より頭より先に、身体が反応した自分に驚愕した。

夜通し腕の中に収めていた肢体が脳裏によみがえってくる。


酔っていたせいもあるのかもしれないけれど、六条は昼間の落ち着きを裏切って、素直に感じて素直に鳴く、久住にとっては嬉しい相手だった。

だが奔放とまではいかず、たとえば"こうしてほしい"みたいなことは言えない。

それでも欲求を隠しきれず、恥ずかしそうに唇を噛んで、潤んだ目で訴えてくるのに煽られて、言わせてみたくて散々いじめた。


屈辱と羞恥に頬を染めて、泣きながら久住に屈する。

征服欲が満たされると同時に湧き上がる、もっと乱れさせてやりたいという加虐心。


生々しく思い出される欲望に、体温が上がった。

できればもう一度。

本音を言えば何度でも。


こんなことを考えている自分に、気づかれるわけにいかない。

でも気づかせて反応を見たい。

ふたつの思いが交錯する。

きっと戸惑って、恥ずかしがって、でも身体を重ねてしまえば甘く絡んでくる。


朝からなに考えてんだよ、と自分を戒めた。

鞄を持つ手に力がこもる。

電車が揺れるたび、六条を押しつぶしそうになり、かばってやりたい気持ちとそのまま抱きしめてしまいたい気持ちの間でぐらつく。


──なんだこれは?


 * * *


「えっ、北米市場ってそんな強いの」

「だよ、年間でいけばまだ日本がトップだけど、月別なら上回ることもあるぜ」



六条が、頭の中でメモを取るみたいに、宙を見つめた。

情報を与えると、よくこういう反応をする。


ベッドの中でするには色気のない会話ではあるものの、今久住たちを繋ぐ主なものは仕事であるのだから、これも妥当だと思えた。

同期などという、後でややこしいことになると絶対わかっている相手と寝るような自分ではなかったはずなのだけれど。

急に眠気に襲われたらしく、枕に頬をつけてぼんやりしている六条を見ながらそんなことを考える。

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