イジワル同期とスイートライフ

エスカレートしてきている気がする。

こういうのを、情動というんだろうか。

抱き合いたいという欲求は、どこからともなくふいに訪れ、身体を支配する。

気心が知れてきた分、気負いもためらいもなくなって、時間も忘れて没頭する。


勘のいい彼は、いつでも私を満たしてくれる。

優しくされたいとき、激しくされたいとき、意地悪く焦らされたいとき。



「だから認めろって。焦らされたいんだろ?」

「あのね、いつでもそうってわけじゃないし、程度の問題もあるの」



ある夜、熱の余韻が残る中で、そんなくだらない話になった。

片手で自分の頭を支えて、片手で私の髪をなでながら、久住くんが鼻で笑う。



「焦らしなんて、頭おかしくなるまでやってなんぼだろ」

「そういう自分理論を押しつけないでくれる?」

「喜んでたくせになあ。終わると冷静ぶっちゃって、かわいいもんだよな」



にやにやと嫌らしく笑う頭を叩いた。

こんな流れでも、かわいいと言われると心が反応するんだから、嫌になる。


かわいげのない、と言われることのほうが多い人生だった。

『俺がいなくても大丈夫そうだし』と言って去っていった人は一人じゃなかった。

確かに大丈夫だったから、始末が悪い。


じゃあもう、言われた通り、当分ひとりでいい。

そう思うようになって数年が過ぎていた。



「え、ちょっと」

「やだ?」

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