イジワル同期とスイートライフ
向井は久住が営業課にいた頃から同じ課で面倒を見てくれていた、一番近い先輩なのだ。

いなくなるのは純粋にさみしくもあり、また向井と同レベルの量と質で仕事をこなす人間が思い当たらないため、今後本当に回せるのかと不安でもある。


それに加え今は、もうひとつの懸念があった。

国内営業部の中で、六条たちの立場を悪くしてしまわないだろうか。

当初、まさかそこまではと話半分に聞いていた国内営業の腐敗は、どうやら噂通りに深刻らしいと最近わかってきた。

そんな中で、六条が理不尽に心と身体を削られているかと思うと、やるせない。

けどそんな久住の心配もどこ吹く風で、大丈夫と六条は笑うだけ。

それどころかこうして、大胆なショートカット案を提示してきたりする。


あいつの部屋を出たいな。

転がり込んで十日と少し。

だんだんとその思いが強くなってきているのを感じた。

なんだか、すごく失礼なことをしている気がしてきたからだ。


最初はまあいいとして、けれどその後は言いくるめるようにしてつきあって、優しさに甘えて住まわせてもらって、居座って。

六条がはっきり拒否しないのをいいことに、甘えすぎなんじゃないか、自分?

急にそんなふうに思えてきた。


たぶん六条は、人がよくて、どちらかといえばおとなしい性格のせいで、久住の勝手を諫めることができずにいる。

そう思うと、今までのように気楽に手を出すのもためらわれる。

嵐のように襲ってくる、抱きたいという欲望が消えたわけではないけれど。

むしろそれは強まっているのかもしれないけれど。

六条は、そんなふうに身勝手に扱っていい存在じゃない。



「なに難しい顔してんだ」

「え、いや、なんでもないです…あれ」



そのときPCに、メールが届いた。

黒沢からだった。


 * * *


ダメだ。

部屋を出よう。


後悔、自責、罪悪感。

そんなものに押しつぶされそうになりながら、一日過ごした。


六条をひどく抱いた。

会社で涙なんか見せるから、それが久住が黒沢と飲んだからなんていう理由で、よくわからないから説明してほしかったのに、逃げるから。

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