イジワル同期とスイートライフ
離れたいなら言えばいい。

なのに言わない。

言わずに泣く。

そんなことされたら、めちゃくちゃにしてやりたくなる。

結局、これまで我慢していた分までぶつけるはめになり、必死で手加減しようとしたものの、たぶんほとんど実行できていなかった。


オフィスの喫煙所で、頭を冷やすために一服しながら、息をついた。

泣くくらいなら、言えばいいだろ。

もう別れるって、それだけ言えばいいだろ。

言われたら聞く。

そういう約束だ。


言わない以上は、お前もこの状況に満足しているって、そう思うよ。

だってほかにどう考えればいい?


なにが気に入らなくて泣くんだ。

さっぱりわからない。

ひとつだけ、はっきりしていることがあるとすれば。

こっちからは、この関係を終わらせるつもりは、まったくないということ。





『え、引っ越したの、こんな半端な時期に、なんで?』

「それについては、長い話があってだな」

『なにそれ、引っ越し祝い持ってくから、聞かせて』



和樹が興味津々な様子を見せる。

笑いごとじゃねえ、と心の中で毒づきながら、今度来いよと誘った。



「お前のほうはどうなってんの、一緒に暮らすとか」

『なんとなく部屋探したりしてるよ、でもすでに条件合わないんだよなー、そもそも職場が全然違う場所にあるからさあ』

「なるほどなあ」



お互い忙しく仕事をしていたら、通勤時間は死活問題だ。

どちらかが折れない限り平行線だろう。



『でも一緒に間取り図見てるだけで、なんかいいよな。リビングとか寝室とか、響きが』

「幸せそうだな…」

『暗い声出すなよー、なんかあったの?』

「なにもないけどさ」

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