イジワル同期とスイートライフ
罰が当たった気がした。

六条に苛立ちをぶつけたまま、なんの歩み寄りもせず出てきた罰が。

彼女は久住が、こんなところにいることも知らないだろう。

遠く離れた国で彼女のことを考えているなんて、想像もしていないだろう。


ふいに恐ろしくなった。

本当に帰れるのか、これ?

拘束は長引くだろう。

じきに帰れたとしても、健康な身体とか、人としての尊厳とか、そういうものをいっさい失わず、来たときと同じ自分で帰れるのか、本当に?


携帯を手放したら、誰にも助けを求められない。

なにもかもをメモリに任せているこのご時世、自分の番号すらたまに怪しいのに。


会社の番号はいい、名刺に書いてある。

家族もなんとかなる、和樹とはあちこちで繋がっている。


でも──六条は。

六条は…?


 * * *


「すげー、そんな目に遭ってたの」

「そうだよ、やっとのことで東京帰ってきたらロストバゲッジしてるしさあ、もう数ある出張トラブルの中でも、最大級だったぜ」

「トラブルってレベルかよ」



和樹が心配そうに叱る。



「なんか祟られてんじゃないの? タヌキとかちゃんと供養しなかったんだろ」

「どこの日本昔話だよ」



くだらない会話を、六条がくすくす笑った。

和樹にみやげを渡すついでに、会わせようと連れてきたのだ。

気楽に飲めるハワイアンバーで、ゆっくりした土曜の夜を楽しんでいる。



「よく私の番号、覚えてたよね」



隣に座った六条が、感心したように言った。

別に最初から覚えていたわけじゃない。

回収される寸前に、六条の番号だけ暗記したのだ。

そりゃもう、必死で。

言わないけれど。

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