イジワル同期とスイートライフ
「だろ、いい加減ほめろよな、そこ」

「すごいすごい」

「お前じゃねーよ」



茶々を入れた和樹の脚を、テーブルの下で蹴った。

よく考えたら、会社に行けばいるし、PCさえ使えればメールも打てるし、わざわざ番号を覚えなくても、六条とそれきりになんてなるわけがなかったのだ。

なんであんなに焦ったんだか。


でもやっぱり、日本に着いて、慣れた空港を歩いている間に、一番に会いたくなったのは六条で、それまで態度の悪かった自分を顧みもせず電話した。

空港を出たらすぐ携帯を買うつもりでいたのに、それすら待てずに。



「こんな乱暴な兄だけど、よろしくね乃梨子さん」

「おい」



和樹が甘えた声を出し、どさくさに紛れて六条の手を握った。

なにやってんだこいつ。

払いのけると、六条が楽しそうに声を出して笑う。



「お似合いだよ、兄貴が力抜けてる」

「俺、これまでそんな力んでた?」

「そういうわけじゃないけどさ」



訳知り顔で和樹が微笑んだ。



「今の兄貴、自然でいいよ、なんかわがままだし」

「俺がわがまま? こいつじゃなくて?」



指差すと「ちょっと待ってよ」と六条が不満げな声をあげる。



「だってそうだろ」



ふたりのときは乃梨子って呼べとか、週末は可能な限り泊まれとか、私の好きなお茶を覚えろとか、六条こそ最近、わがままがすごいんだが。

そういうのを出さずに溜めこむ奴だってことがわかったので、なんでも言えと言ったら、本当になんでも言ってくるようになった。



「かーわいい、もとがしっかりしてると、加減できないんだな」

「お前がかわいいとか言うな」

「じゃあ兄貴が言ってやれよ」



うるさい。

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