イジワル同期とスイートライフ
しばらくテーブルを見つめていた久住くんは、やがて視線を上げると、ちょっと困ったように笑った。



「結局、これまでの相手は単に、甘えさせるのが下手だっただけですよね」



絶句した。

うわあ…。

見れば姉も言葉を失って、じわじわと首から上を赤く染めている。

当の久住くんは、自分がなにを言ったのか気づいていないらしく、思いがけない反応に戸惑った顔をしていた。



「そ、そう、えーと、賢児くん、リコちゃんをよろしくお願いします」

「あ、はあ…?」



トマトみたいになった姉に頭を下げられ、つられてお辞儀しながらも、不思議そうに目を瞬いた。

彼はあくまで、私の過去の男について分析しただけの気でいるけれど、聞いた姉からしたら、あれは現カレである久住くんの、雄としての勝ち宣言に近い。

つまり『俺なら大丈夫です』『甘えさせてみせます』と言ったことになるわけだ。

私からすれば、彼氏が姉に向かってのろけたようなもので。

これは恥ずかしい。

後で説明してあげよう。


一時間もすると旦那さんから連絡が来て、姉は去っていった。

すっかり消耗したらしい久住くんは、ベッドに突っ伏して脱力している。



「お疲れさま」

「マジお疲れ、俺」

「自分で蒔いた種でしょ」

「だってお前が宅配便とか言うから」

「え、そこなの?」



そばに腰かけると、彼が顔だけこちらに向ける。



「ほかにどこがあんの?」

「記憶なくしちゃったの?」



私の棘のある言い方に、なんのことか思い当たったらしい。



「あー…」

「あーじゃなくて」

「でもそれは、お前がいまだにノーと言わないからであって、連帯責任だよな、もう?」

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