イジワル同期とスイートライフ
おい。

思わず返信を打つ手が止まり、会話が一瞬途切れる。

少し間があいたのち、向こうから打ってきた。



【俺が出るんじゃないからな?】

【聞いてないよ】

【幹事できる女を紹介しろって言われてて】

【聞いてないって】

【聞けよ】

【別に出てくれてもいいし】

【言っとくが、そういうのは、しっかりしてるって言わないからな】



ぎくっとした。

既読にしてしまったからには、なにか返事をしないとまずいのに、鋭い切り返しも新しい話題も浮かばない。



【でも本音だし】

【本音でも言うな】



この流れ、嫌だ。

きっとどこかで出るだろう、聞き飽きたあのフレーズ。

"かわいくない"


もういいや、と携帯を置いて、パンを片手に、販売実績の月次統括を作成する作業に戻った。

WDM以外にも、仕事は山ほどあるのだ。

すぐに机の上で、携帯が振動した。

見たくないメッセージが待っていそうで、反射的に無視を決め込み仕事を続けたものの、なんでか振動が止まらない。

慌てて確認したら、着信だった。

久住くんから。



「…はい?」

『シカトしてんじゃねーよ、なんか言え』



別件の急用だったらと思って出たのに、まさかの続きだった。

不機嫌な声が、理不尽にさえ思える。



「言えとか言うなとか、どっちなの」

『屁理屈こねんな』

「仕事中なんだけど」

『昼休みだろ』

「食べながら仕事してるの!」

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