イジワル同期とスイートライフ
すると私たちの会話を向かいで聞いていた幸枝さんが、シェア方式にしようと言いだしてくれた。
「適当に頼むから、好きに食べなよ」
「助かります」
メニューを彼女に預け、ふうとテーブルに片肘をついて煙草を取り出す。
この定例会の参加者たちは、奇跡のように喫煙率が高く、吸わないのは私と、購買部の男性だけだ。
夜を機内で過ごし、着くなり出社で、やっぱり疲れているんだろう、うつむいて煙を吐き出す横顔は、どことなくぼんやりしている。
テーブルにフードが並びはじめても、煙草を吸いきってから食べる気らしく、久住くんは手をつけようとしなかった。
「取ろうか?」
「いや、いいよ、サンキュ」
でも、みんなすごい勢いだから、出遅れたらなくなってしまう。
私は自分の分を取るかたわら、彼の分も取り分けておくことにした。
ふと久住くんが、スーツの内ポケットからなにか取り出して、私によこした。
テーブルの陰で、握り拳を押しつけるようにして渡されたそれは、布でできたかわいらしい花がついたキーホルダーだった。
「みやげ」
「え…」
揺らすと、金色の小さな鈴が、遠慮がちにチリ、と鳴る。
かわいい。
「嬉しい、ありがとう、わざわざ」
「世話になってるし」
久住くんがちらっとこちらを見て、きまり悪そうに微笑んだ。
他のメンバーは食事に夢中で、誰も私たちのやりとりに注意を払ってはいない。
膝の上にキーホルダーを置いて、こっそり、じっくり眺める。
これ、絹かな。
あっ、タイシルクか。
すごい、本当に嬉しい。
「適当に頼むから、好きに食べなよ」
「助かります」
メニューを彼女に預け、ふうとテーブルに片肘をついて煙草を取り出す。
この定例会の参加者たちは、奇跡のように喫煙率が高く、吸わないのは私と、購買部の男性だけだ。
夜を機内で過ごし、着くなり出社で、やっぱり疲れているんだろう、うつむいて煙を吐き出す横顔は、どことなくぼんやりしている。
テーブルにフードが並びはじめても、煙草を吸いきってから食べる気らしく、久住くんは手をつけようとしなかった。
「取ろうか?」
「いや、いいよ、サンキュ」
でも、みんなすごい勢いだから、出遅れたらなくなってしまう。
私は自分の分を取るかたわら、彼の分も取り分けておくことにした。
ふと久住くんが、スーツの内ポケットからなにか取り出して、私によこした。
テーブルの陰で、握り拳を押しつけるようにして渡されたそれは、布でできたかわいらしい花がついたキーホルダーだった。
「みやげ」
「え…」
揺らすと、金色の小さな鈴が、遠慮がちにチリ、と鳴る。
かわいい。
「嬉しい、ありがとう、わざわざ」
「世話になってるし」
久住くんがちらっとこちらを見て、きまり悪そうに微笑んだ。
他のメンバーは食事に夢中で、誰も私たちのやりとりに注意を払ってはいない。
膝の上にキーホルダーを置いて、こっそり、じっくり眺める。
これ、絹かな。
あっ、タイシルクか。
すごい、本当に嬉しい。