イジワル同期とスイートライフ
「申し訳ありません、遅れました」



ノックの音と共に久住くんが入ってきたのは、一時間ほどたった頃だった。

さすがにくたびれた様子で、出席者に謝罪しながら向井さんの隣の席につく。



「お帰り、大変だったな」

「あ、すみません、構わず進めてください」

「いや、ちょうど小休止入れようとしてたとこだったんだ」



そうですか、とほっとしたように息をついて、ネクタイを少し緩めた。

会議用のコーヒーを勧めながら、幸枝さんが尋ねる。



「電車止まってたんだって? バスで帰ってきたの?」

「それが完全に止まってはいないのが悩ましかったところで、バスだと時間かかるし、道中仕事しづらいし」

「結局どうしたの」

「天気とかいろいろ情報を探った結果、運行が正常に戻るほうに賭けて、ちょうど来た電車に飛び乗りました」

「勝った?」

「バスを選んでたらまだ着いてないですね」



にやりとした久住くんに、おおー、と全員が湧いた。



「持ってるねー」

「ちょっと今度の菊花賞の予想してみてくれない?」



わいわいと、つかの間の休憩が盛り上がる。

ふたつの部門の、ここは唯一と言っていい接点だ。

部署だって人でできている。

いい関係になりたいと、本気で思いさえすれば、こんなふうにもなれるのだ。





「腹減りすぎて、なに食いたいかわかんない」



ランチは近所のイタリアンでとることになった。

団体用のソファ席に全員が収まったところで、隣に座った久住くんが、メニューを見ながら悲しそうに言った。



「帰ってきてから食べてないの?」

「タイミングなくてさ」

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