イジワル同期とスイートライフ
「提案したよ、当然。俺だってそこまで鈍くねーよ、ふたりで行ったらやばいってことくらい感じてた」

「わかってて行ったんだ」

「じゃあお前、たとえば向井さんから誘われて、断れんのか」

「話をすり替えないでよ」

「すり替えてんのはお前だ。気に入らないことがあるならはっきり言え」



気に入らないこと?

全部だよ、全部。


私の知らないところで、私の先輩と約束なんてして。

ふたりっきりで飲みに行って、私の知らない話をして。

なにを言われたの。

私たちのことを話すまでに、どんな流れがあったの。



「せめて行く前に、教えてくれたって…」

「だから自分に置き換えてみろってんだよ、お前の先輩が、お前には言ってない中で、俺が勝手に言えるわけないだろ!」



わかってるよ、そのくらい。

頭ではわかってる。

でも。



「おい、六条…」



久住くんの反応で、私は自分がどれだけひどい顔をしているのか想像がついた。

気持ちを隠す余裕もない。



「六条」

「ごめん、また後でね」

「六条!」



涙がこぼれる前に洗面所に駆け込んだ。

これは別に、久住くんに見せたい涙じゃない。

単に、動揺に呼応して出てきた涙だ。

動揺って、なにに?


──自分の心に。

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