愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「小西さんが来てたら、今日のこと、バレバレだよね。」

「そうだね…どのくらいの子が知ってるのかな?
あ、璃愛…キラさん達に席取ってもらったお礼に、フードの差し入れしない?」

「それ良いね。
私も気になってたんだ。
いつも席取ってもらってばっかりだから。」

私達は、四人分のドリンクとフードを買った。
このくらいで済むとは思ってないけど、せめてもの気持ち…



「そういえば、ロシアン・ルーレットってバンドがこれまた格好良いらしいよ。
そのバンドが今日のトリだって噂だよ。」

「そうなの?」

「この前もらったチラシにもあったじゃない。
見なかったの?」

「うん…チラシは…あっ!」

背中を押され、私は無様に膝を着いて、持っていたドリンクとポテトをその場にぶちまけてしまった。



「璃愛、大丈夫!?」

「う、うん、大丈夫だよ。」

立ち上がろうとしたら、ひざに痛みを感じた。
膝には血がにじんでいた。



「ちょっと、あんた達…!」

笑いながら走って逃げて行く女の子達に、さゆみが声を上げた。



「待ちなさいよ、卑怯者~!!」

さらにもっと大きな声でさゆみが叫ぶ。



「エミリー…やめて…」

「でも、璃愛…」

「大丈夫だから。
ドリンクとフード、また買ってこなくちゃね。
ここはこのままにしてて大丈夫かな?
スタッフさんに言わなきゃまずいかな?
……あ、エミリーは先に席に戻ってて。」

「何言ってんの。
あいつら、また来るかもしれないし、着いてくよ。」

「またって…どういうこと?」

「あんたねぇ…まだ気付いてないの!?」

さゆみは明らかに怒った口調でそう言った。
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