人間嫌いの小説家の嘘と本当
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「おかしい……何かの罠でしょうか?怖すぎますよね」

「……私には、あなたが唐突にココにやって来て、昼食の手伝いをしたいと言い出した事が怖いですが」



私は今、昼食の用意を手伝うべくキッチンに来てジャガイモの皮を剥いている。

と言うのも、侑李は小説の為に部屋に籠っているし、何もすることが無くて手持無沙汰になった、と言うだけだったりするんだけれど。



「いや、だって。一ヶ月ですよ?何の音沙汰もないんです」

「はぁ……連絡がないのは元気な証拠と言いますし、宜しいのでは?」



櫻井さんは、いきなり話を切り出した私に怪訝な表情を浮かべながらも、返事を返しつつ隣で手際よく材料を刻み鍋に入れていく。

七月に入り、少し気温も暑いくらいに上昇する日も増えてきた。
そのため今日は、冷製スープのビシソワーズをつくるのだとか。

しかも櫻井さんが作るのは全てが一流レストラン並のものばかり。
ネットで掲載されている、主婦向けのものとは食材も手間も格段に違う。

侑李の口に入るものは良き食材、最善の調理方法でなければいけませんと、以前珍しくも鼻息荒く力説されたことがある。

櫻井さんなりの、執事としてのプライドといったところだろうか。

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