人間嫌いの小説家の嘘と本当
それに比べ、料理自体が苦手で基本レトルトに頼りっきりだった私生活。
毎日、今までとは考えられない程に贅沢で美味しいものばかり。
私にとっては、それが悩みの種のひとつだったりする。
ついつい食べ過ぎて、体重が増えてしまうのだ。
「でもですよ?あれだけ毎日のように襲ってきていた奴らが、全く姿を現さないんです。諦めたとは到底思えません」
そう、ここ一ヶ月……正確には、真幸に会ったあの夜からだ。
侑李と夜の散歩に出かけても、誰も付いてくる気配もしなかったし襲っても来ない。
それプラス、毎朝のトレーニングとしてジョギングも陽が昇るまでの間で、約五㎞走るようになったけれど何の気配もない。
ほぼ毎日のように仕掛けてきていた奴らが、何の音沙汰もないのは不気味で恐怖さえ感じる。
「私は、あなたに諦めて欲しいですね……ジャガイモの芽を取っていただきたいとお伝えした筈ですが、どうして一回りも小さくなっているんでしょうか」
櫻井さんは、私が皮を剥いたじゃがいもを手に小さくため息を吐いた。
そんな彼に気付くことなく、私はピーラーを右手にジャガイモの芽の黒い痕が見えなくなるまでスライスしていく。
「嵐の前の静けさって感じで、怖いですよね」
「私は、あなたの料理センスが怖いです……嵐にならなければ良いですが――」