人間嫌いの小説家の嘘と本当
「私は、ずっとそばに居るから」
ふっと彼の体から力が抜け「あぁ」と短い返事が聞こえた。
微熱が残る体温と汗の匂いに、彼が生きていることを感じる。
もう誰も失いたくない。
「お前の体温、少し冷たくて気持ちがいいな」
ゆっくりと指で何度も髪を掬う動きと、低い声が心地いい。
だんだん睡魔が誘い、瞼が重くなっていく。
「眠いのか?」
「ん……ごめ……ゆ、り」
彼の胸に擦り寄り、微睡の中で聞えた彼の声になんとか答える。
「謝んな……おやすみ、涼花」
温かくて柔らかなものが額に触れたところまでは覚えているけれど、彼の心臓の音が眠りを助長し、そのまま意識を手放した。