人間嫌いの小説家の嘘と本当

特に今は休んでしまった遅れを取り戻すように、常にパソコンに視線を落とし、忙しなく指を動かしている。

時々、何かを考えるように天井を見上げたりするものの水分補給はおろか、トイレさえ行かない。

まだ病み上がりなのに、大丈夫かな――。

こんな姿、締め切り追われていた時にだって見たことが無い。
侑李の体が心配で、少しの変化も見逃さないように、チラチラと何度も彼を盗み見る。

これじゃ、ボディガードとして傍に居た時と変わらない。
むしろ思いが通じた分、自分には何も出来ないのだと、改めて強く実感させられ虚しくなり、溜め息を付いた。

実際、今の私には何も出来ないのだけど少し不安だ。
もちろん、これが侑李の仕事だとは分かっている。
だけど、もう少し私を頼って欲しい。

甘い雰囲気になるどころか、以前よりも壁を感じてしまう。



「蒼井様、お医者様が来られました。部屋にお通しして宜しいですか?」



そう言えば、今日は診察の日だったな。

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