短編集『芸術家、ボコられる。』
斎藤「パティシエです」

ダンテ「お前黙ってろ」

ヤマーシィ「ツゴペルをうまいケーキで唸らせるんだ」

ダンテ「喜ばせてどうすんだよ」

ヤマーシィ「喜ばすんじゃない、唸らせるんだ」

ダンテ「唸らすってなに、毒でも入れんのか?」

ヤマーシィ「ひっくり返るほどの美味しさに、唸らすんだ」

ダンテ「やっぱ喜ばせてんじゃねぇかよっ。おい、兄貴、お前はオヤジが殺された怒り、なくしちまったのかよぉ」

ヤマーシィ「なくすもんか。ふつふつとした恨みは、未来永劫消えることはないさ。この怒りの熱でケーキが焼けるほどだ」

ダンテ「やかましいわ」

ヤマーシィ「貯金をはたいて来て貰ったんだ、斎藤さんに」

ダンテ「何に貯金はたいてんだよ」

ヤマーシィ「旨すぎて、オヤジ殺したこと後悔させてやろうぜ?」

ダンテ「感情の流れが見えんっ」

斎藤「ツゴペルの好みのケーキが実に知りたいのです。それとなく、聞いて来ては貰えますまいか。」

ダンテ「おま、なに言ってんのよ。」

斎藤「好みが分からなければ、作れないよー」

ダンテ「ホントお前なに言ってんのよ。殺したいくらい憎い相手なんだよ。聞ける訳ないだろうが」

ヤマーシィ「そうくると思ったぜ」

ダンテ「あ?」

ヤマーシィ「彼女を呼んである」

ダンテ「誰のだよ」

ヤマーシィ「勿論、ツゴペルのだ」

ダンテ「ツゴペルの彼女呼んでどうすんだよっ」

ヤマーシィ「ミズエリだ。入ってくれ」

すると、ロングスカートを身にまとった、きれいな女性、ミズエリがドアをガチャっと開け、入ってきた。
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