愛を教えてくれたのは若頭


もう秋だというのに
相変わらず扇子をパタパタしている
頭を下げた男が後ろへ下がると
パチンと扇子を畳み私に近づいてきた


「元気そうで、何よりだわ」


『…よっちゃんの所から助けてくれたのって…貴方だったんですか?』


「…あれは、久家の不始末よ」


久家…というのは、さっきの男性だろう
後ろの男性はまた頭を下げていた


あの時、私を待っていた久家さんは
マンションの前に車を停めると邪魔だと住人らしき人に言われ
どうしようか悩んだ挙句
一周回って、またマンションの前にいようと車を動かしたという

再度、マンションの前で待つが
いつまでたっても私は出てこず
おかしいと思いマンションの中へと様子を見に来たという

いくら探しても私はおらず
かわりにあったのは、私のパスケース

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