クリスマスプレゼントは王子さま
少しは味わってください





「姉ちゃん、難しい顔をしてどうかしたの?」


ホテルに帰ってすぐ、部屋にいた翼に心配そうに訊かれて、「う、ううん何でもないよ」と答えた。


(いけない、いけない。弟達に心配かけちゃ。何とか明るく振る舞わないと……)


「あ、ううん。ただ、夕御飯なににしようかな……って悩んでただけだから」

「あはは! 姉ちゃん最近よく食べるもんな。ブタになるなよ~」


ソファで飛びはねていた海がふざけたことを言うから、私はこら! と弟を叱る。


「海~! ソファで遊ばない。それから、姉ちゃんに失礼なことを言っちゃダメでしょ」


腰に手を当ててにらむと、「こええ~姉ちゃんが角生やした!逃げろ」と子分の裕くんを連れて逃げる。その逃げ足の早いことったら。


「もう! 海ったら悪さばかり」

「……でも、海。元気ないお姉ちゃん心配してた」


弟の所業に憤っていると、美麗ちゃんに絵本を読み聞かせていた風花が、珍しくぼそぼそと喋る。


「え」

「海だけでなくみんな本当は不安だから、海はわざとああやって明るくしてるの。あんまり怒らないで」


下を向いて表情はわからないけど、風花は弟を理解して庇おうとしてくれてる。そんな妹が可愛くなって、思わず後ろから抱きしめた。


「わかった。風花も海も翼も……みんなみんな優しい子で姉ちゃんはしあわせだよ。ありがとうね」


頭を撫でると、照れながらも控えめに喜ぶ妹。そんな胸が温かくなる光景に身を置きながらも……私は以前より胸が痛むようになった。


(レン王子は……いつからこんな日常を失ったんだろう)



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